WordPress と WP Engine の闘争、というか Matt Mullenweg (Automattic) による WP Engine への扇動的かつ一方的な攻撃が話題となっている。日本語圏はなぜか暢気なものだが、今回の件は非常に重大であり、WordPress の歴史において分岐点になりかねない。少なくとも Reddit ではそれなりに紛糾しているようだ。
広く同意が得られる見解ではないかもしれないが、個人的にはかなり以前から Matt Mullenweg による WordPress の私物化・私有化の傾向を感じていた。彼の保有する Automattic はフリーミアムな商売をする企業の見本のようなもので、これらの企業はしばしばオープンソースの理念を曲解・援用することがある。確かに彼らは自らの OSS に多大な貢献をしているが、動機は営利に過ぎない。彼らが発言するときに OSS 利用者などコミュニティの同意や意思は必ずしも含まれない。彼らは自分たちの利益とオープンソースの理念を混同して発言する。意図的であればまだマシで、確信犯の場合は改善が望めない。
とにかく “オープンソースへの貢献” という言葉を軽々しく受け止めるべきではない。権力者による “社会への貢献” は誰が最大の利益を得て、誰が最大の負担を被るのかほとんどの場合言及されない、それは権力の源泉が搾取だからだ。
整理すると:
- WP Engine の貢献が少ない、という主張はまあ妥当。俺の作った商売道具を勝手に使うな程度の意味でしかないが。
- WP Engine に “WP” は WordPress を想起させるから使用するな、という主張は WordPress.com の存在を考えると公平性に欠ける。WordPress.com が特別扱いされる理由は? コミュニティが (既成事実でなく、また事実上選択肢のない議題としてでもなく) 支持した事?
- WordPress.org から WP Engine を ban したのは疑いなく危険、Matt Mullenweg が WordPress における独裁者であると宣言したようなもの。
- JetPack から WP Engine を ban したのであれば、WordPress.org === Matt (Automattic) である強い証拠になる。
一連の流れにおいてオープンソースは主題ではない、Matt Mullenweg による反競争的な行為が問題となっている。Matt Mullenweg は WordPress.org (完全なるクローズドソース、運営の詳細は非公開、おそらく独立した法人でない)・Automattic (WordPress.com など)・WordPress Foundation すべてを掌握しており、我々は WordPress エコシステムで行動する限り彼の大きな影響を受ける。オープンソースなのだからそれを利用する営利組織は貢献するのは当然だと捉えるのは早計であり、Automattic が利用するための機能開発に競合他社が “貢献” させられる可能性は現実的に大きい (Gutenberg の開発はそれと言ってよい)。WordPress.org の運営にコストがかかると訴えられたとして、その部分をどのようにケアするか、あるいは閾値を超えた分を有料化するかなどは今まで全く問題提起されてこなかった。また、Matt Mullenweg の一連の行動は、非営利で貢献している多くのボランティア開発者の信頼を損ねる裏切りに近いものである。大きな影響力のあるプラグイン (WP Engine の保有する Advanced Custom Fields など) を Automattic が乗っ取ることは既に現実となりつつある。
他のまとめ:
- bullenweg.com 素晴らしいまとめ。
- Mullenweg threatens corporate takeover of WP Engine – The Repository (2024-10-01 までの経緯)
- WordPress の最新情報 🚫 WP Engine の状況
- Matt Mullenweg は WordPress.org のリーダーから早急に退任する必要がある
- WordPress 論争 🔴ライブアップデート
- https://gist.github.com/adrienne/aea9dd7ca19c8985157d9c42f7fc225d
本来は別のページにすべきなのでしょうが、ここから下の部分はリアルタイムに更新しています。
時系列:
注: bullenweg.com、https://gist.github.com/adrienne/aea9dd7ca19c8985157d9c42f7fc225d もリアルタイムで更新されているまとめです。
注: なるべく UTC 基準、並び順は正確でない可能性がある。
- 2003-04-01 Matt Mullenweg が b2/Cafelog から WordPress をフォーク、友人の Christine Tremoulet が作った名前を使って、それを WordPress と名付ける。
- 2005 年、Matt Mullenweg は WordPress と関連プロジェクトに専念するために Automattic を設立。
- 2005 年、WordPress/HotNacho SEO、WordPress.org 上で検索エンジンスパム記事が公開されていたが Matt Mullenweg はこれを認めていた。
- 2010 年、非営利団体 WordPress Foundation が設立される。
- 商標を含む WordPress のすべての知的財産は WordPress Foundation に譲渡される。WordPress Foundation は Automattic にすべての商標を商業的に利用する独占権 (他社へのサブライセンスなども含む) を与えているようだ。
- 2022 年現在、財団の理事は Matt Mullenweg と他 2 人 (MATT MULLENWEG, CHELE CHIAVACCI FARLEY, MARK GHOSH) である (少し詳しい説明)。Matt Mullenweg は 2016 年に行われた Chele Chiavacci の結婚式に出席するほどの仲。
- WordPress Foundation には不透明な部分が多いが、Automattic・Matt Mullenweg とほぼ同一であるとの論調が多い。
- WordPress.org の whois には 2024-09-30 時点で何の情報も含まれない。WordPress.org は Matt Mullenweg の所有している企業 Mobius Ltd の管理下にある。後述するが WordPress.org と WordPress Foundation は関連がない。
- 2010-09-13 2024 年の状況を予想した警鐘が残される。(後日発見される)
- 2010 年、WordPress Foundation が WordCamp を商標登録する。WordCamps Dallas の主催者の一人は、OpenCamp という複数 (WordCamp Dallas, DrupalCamp, JoomlaCamp) のイベントが併催されるコミュニティ主導のイベントが成功したことが影響している (コミュニティによる主導を暗に嫌った) と指摘。
- 2014 – 2015 年、プレミアム WordPress テーマ Thesis と Automattic の闘争。
- 2018 年以降、Automattic 関係者は 16 回、WordPress リリースを指揮する。
- 2018-10-09 WordPress アクセシビリティ チームのリーダーを辞任した Rian Rietveld は Matt Mullenweg に対しコミュニティをもっと大切にするよう発言。
- Gutenberg がキーボード UX を考慮していないという内容もあるが、6 年が経過し 2024 年にこの記事を書いているバージョンでも Gutenberg のキーボード対応は劣悪と言わざるを得ない。
- 2024-02 Matt Mullenweg が Tumblr (Automattic が買収) 上でトランスフォビア行為およびユーザーのプライバシーを侵害。
- 2024-05 頃、2012 年から Automattic に勤務していた Paul Sieminski が CLO (Chief Legal Officer) を辞める?
- 2024-07-12 WordPress Foundation が “Managed WordPress” と “Hosted WordPress” の商標登録を申請。
- 2024-09-17 Five for the Future の文言が変更される。
- 2024-09-19 Matt Mullenweg が他社の貢献についてあいまいな発言を行う。
- 2024-09-20 Matt Mullenweg が WordCamp US 2024 の基調講演・閉会スピーチで WP Engine を非難する。WordCamp の行動規範に反しているとの声も。
- 理由の一つとしていまいち判然としない WooCommerce Stripe Payment Gateway の改変があるが、こちらにある説明がおそらくすべてであり、そもそも Automattic に紐づくと思われるアフィリエイトコードがハードコーディングされている。どちらの行為もユーザーにとって直接的なメリットはないと考えられ、無視して良いだろう。
- 2024-09-23T22:52:09.000Z WP Engine が “Automattic” (WordPress Foundation でなく) に送付した書簡 (停止通告書 (Cease and Desist letter・警告書)) を公開。この中で WP Engine は、2024-09-20 以前に Automattic が WP Engine に対して金銭の支払いを要求していたと主張。
- 2024-09-24 WordPress Foundation の商標ポリシーが更新?
- 2024-09-24 Reddit で、Matt 自身が WP Engine に収益の 8% を要求したことを認める
- 2024-09-25 Automattic が WP Engine に書簡を送付。商標に関するもの。
- 2024-09-25 WP Engine is banned from WordPress.org
- 2024-09-26 Yoast の開発者が代表なくして課税なしと発言。
- 2024-09-27 WP Engine ban が解除 (一時的? 2024-10-01 まで?) される。
- 2024-09-27 (本気ではないかもしれないが) Matt が Advanced Custom Fields Pro (WP Engine の所有物) を WordPress core に組み込むことを提案
- 2024-09-28 Matt Mullenweg が WordPress.org のミラーは不要と発言。
- 2024-09-29 Making WordPress Slack から ban される開発者が表れ始める。
- 2024-09-30 Automattic の元従業員 Alda Vigdís は、Matt Mullenweg による WordPress コミュニティの私物化、また女性差別について発言。“Contributing Code to the WordPress Core is a Chore Better Lived Without” (WordPress コアへのコード貢献は、やらないほうが良い面倒な作業です) とも。また、Automattic は米国を拠点とする中規模の民間企業体であることを盾に自らを保護し、いかなる外国の法的措置にも応じなかった、からの下りは Matt Mullenweg による一連の法を軽視した行動と整合する。
- 2024-10-01 WP Engine の CEO、Heather Brunner に対する Matt Mullenweg の個人的な確執への指摘。
- 2024-10-01 WP Engine is banned from WordPress.org, again. 直後に WP Engine は (迂回手段を用いて) アクセスを回復。
- 2024-10-01 Matt Mullenweg が WordPress.org を所有していることを認める。The Verge のインタビューに対しても同様の回答をしている。
- 2024-10-01 Automattic の従業員に、Matt Mullenweg の行動に同調できず退職する場合は退職金の割り増しが掲示されたとの噂。
- 2024-10-02 Automattic が WP Engine との商標に関する議論のタイムラインを公開。Automattic が WP Engine に送付したとされる契約書は一般的な営利企業が同意できるものには見えない。
- 2024-10-02 Automattic が商標に関する説明を公開。
- 2024-10-03 WP Engine が訴状?を公開。この中で、WP Engine の CEO、Heather Brunner に対して Matt Mullenweg は個人的な攻撃をしていると主張されている (35 頁目、19 行付近から)。過去 7 年間、Matt Mullenweg が、偽証罪の罰則を受けながら WordPress Foundation に代わって米国内国歳入庁に提出する書類に記入した、とあるが法的な刑罰が発生したかの表現であるかは不明。(15 頁目、7 行目)
- 2024-10-03 Automattic が WP Engine の訴訟に反応。内容に乏しいうえにこのページは当初 https://automattic.com/2024/10/03/a-statement-from-automattic/ として公開されていたものが、https://automattic.com/2024/10/03/meritless/ に変更されたようだ。雇われた弁護士 Neal Katyal は好意的に言っても資本の代理人のようだ。
- 2024-10-03 WordPress Executive Director である Josepha Haden Chomphosy が Automattic を退社。とはいえ彼女は Matt のスポークスマン的存在でしかなかったようだ。WordPress Executive Director が具体的に何を指すのかいまいち判然としないし、Automattic 社内のポジションであるとしても、対外的に “Automattic の” と付かないことが多いようで、これも Matt Mullenweg による WordPress の私物化とその隠蔽の証拠に見える。
- 2024-10-03 Kellie Peterson (元 Automattic のドメイン責任者) による告発。少なくとも 2024-10-01 の退職に関する噂は事実であったようだ。
- 2024-10-03 Automattic から 159 人 (全従業員の 8.4 %) が提示された割り増し退職金を受け取り、退社したことを Matt Mullenweg が報告。
- 2024-10-05 Matt Mullenweg、Advanced Custom Fields について代替案や今後利用者数が減少するだろうなどと仄めかす。WordPress.org、Advanced Custom Fields の開発者のアカウントをアクセス禁止にしたうえで CVE 脆弱性を指摘、30 日以内の修正の必要性を通知 (X の投稿は削除済み、URL が分かるページ)。削除された投稿のスクリーンショットはここで確認できる。この状況が続けば、Advanced Custom Fields を利用しているだけの一般ユーザーは脆弱性に晒されたままとなる。通常、ソフトウェアの脆弱性は開発元に情報提供され、修正が期待できるまである程度の期間を置いてから一般に開示される。Matt Mullenweg は Automattic や WP Engine とは何の関係もないはずのユーザーを巻き込んでいる。
- 注: Advanced Custom Fields v6.3.7 以降は WordPress.org 以外のアップデートサーバーを利用するようになっている。ただし、v6.3.7 以降へのアップデートは手動で行う必要がある。
- 2024-10-05 Matt Mullenweg が Automattic 退職者向けの Slack ワークスペースに乗り込む。
- 2024-10-05 WordPress 公式 X アカウントが批判者をブロックする。
- 2024-10-05 WordPress.org の Plugin review queue が空に。分断の兆候かもしれない。
- 2024-10-06 WordPress コア セキュリティ チームの一員であり、Automattic の従業員ではない John Blackbourn は、Advanced Custom Fields のアップデートがプラグイン リポジトリに反映されるようにすると発言。
- 2024-10-08 WPGraphQL の開発者が WP Engine から Automattic に移籍し、WP Engine の名前を Canonical Community Plugin に変更。
- 移籍も名称変更も示唆的で、長々と前置きしているが、最後に “my livelihood depends on people like Matt” などと吐露している辺りがすべてだろう。
- 影響力の強いプラグインを Automattic が取り込み続ける (そして背いたものは淘汰される)、というのは裏を返せば Automattic でなければならないとも取れてしまう。この状況では無邪気に歓迎できる出来事ではない。
- 2024-10-08 Mary Hubbard が Executive Director of WordPress.org に就任。Josepha Haden Chomphosy の後任。Executive Director of WordPress.org とはいったい何なのか未だに不明瞭。
- 2024-10-08 Ruby on Rails の創設者 David Heinemeier Hansson が、”Automattic is doing open source dirty” と題した記事を投稿。オープンソースライセンスを恣意的に解釈・悪用していると批判。
- 2024-10-09 WordPress.org へログインまたは登録するときに “I am not affiliated with WP Engine in any way, financially or otherwise.” (私は金銭的にもその他の面でも WP Engine とは一切関係ありません。) という誓約への同意が必須となっている。当初は “WP Engine has filed a massive lawsuite” とおそらくは https://x.com/wpengine/status/1841633469685723292 へのリンクがあったようだ。スクリーンショット等が見つけられないが、この中で Matt Mullenweg は “WP Engine’s lawsuit has put everyone who participates in .org in the position of possibly needing legal representation” (WP Engine の訴訟により、.org に参加するすべての人が法的代理人を必要とする可能性がある立場に置かれました) とコミュニティに対しては脅迫にしかならない発言をしている。
(削除された “WP Engine has filed a massive lawsuite”)
- 2024-10-09 Kellie Peterson が背後に直近数年の WP Engine の急成長と (それと比較すると) Automattic の低成長があるのではないかと指摘。
- 2024-10-09 Automattic の現従業員 James Giroux の投稿。未だに Silver Lake (WP Engine を支援する Private equity) に固執することで自分たちの正当性を訴えている。
- 2024-10-09 WordPress Slack にて WordPress.org ログイン画面の件について異議を唱えたコミュニティ開発者 Javier Casares が ban される。同様に Jono Alderson が ban された模様、また Andrew Robbins は “fake accounts” を理由に ban されたとしている。同じくスレッドに参加していた Alex Sirota が ban されたと報告。
- Javier Casares は Hosting Team を率いていた。これも境界の曖昧な用語に見えるが、おそらく Automattic 以外または Automattic も含めたホスティングサービスを提供する組織の集まりで、そうであれば競合他社の不利益のために Automattic の従業員でない彼を安易に ban するのは一連の流れとしてある程度の説得力がある。
- 2024-10-09 WP Engine が WordPress.org のログイン画面について “We value our customers, agencies, users and the community as a whole, none of whom are affiliates of WP Engine.” (私たちはお客様、代理店、ユーザー、コミュニティ全体を大切にしており、そのいずれも WP Engine の関連会社ではありません。) と発言。
- 2024-10-09 Automattic が以前に公開した商標に関する投稿を編集。WordPress.org が非営利団体という下りが修正される。
- 前段として Hacker News での Executive Director of WordPress.org の実態に関する議論 (Matt Mullenweg と Neil Peretz (Head of Legal for WooCommerce and legal lead for brand licensing for Automattic) が参加) があったようだが、完全に混乱しており、Automattic 社内の人間であっても WordPress.org などに対して誤りのない認知があるわけではないようだ。
- 2024-10-10 WordPress.org のログイン画面に関する Reddit のスレッドが削除される。“removed by the moderators of r/Wordpress” となっているがモデレーターの中には Automattic の従業員がいる。
- 2024-10-11 MariaDB Foundation の Chief Contributions Officer、Andrew Hutchings が WordPress Slack を ban されたことを報告。
- 2024-10-11 WordCamp Kerala 2024 (インド ケララ州) のチケット購入のために WordPress.org が必須とされる。例のログイン画面の誓約と関連していないのと考えるのは難しい。
- 2024-10-12 Matt Mullenweg が Addvanced Custom Fields を乗っ取る。セキュリティ修正がどうの言い訳をしているが、Advanced Custom Fields のオリジナル開発者を WordPress.org から締め出し、Advanced Custom Fields の plugin slug をそのまま使用する行為は乗っ取り以外の何物でもない。Advanced Custom Fields が WordPress.org で得た評価 (Active installations や Ratings) は Secure Custom Fields という Matt Mullenweg がフォークしたと主張するプラグインによって奪い去られた。また、声明の中で Matt Mullenweg は性懲りもなく WordPress・WordPress.org・Automattic を反復横跳びしており、最後には “There is separate, but not directly related news that Jason Bahl has left WP Engine to work for Automattic and will be making WPGraphQL a canonical community plugin. We expect others will follow as well.” (直接関係のない別のニュースとして、Jason Bahl 氏が WP Engine を離れて Automattic に入社し、WPGraphQL を標準的なコミュニティ プラグインにする予定であるというニュースがあります。他の人たちも追随すると予想されます。) と付け加えるなど非常に攻撃的な態度で締めくくっている。
- この行為については Ruby on Rails の創設者 David Heinemeier Hansson が “Imagine Meta getting into a legal dispute with Microsoft (the owners of GitHub, who in turn own npm), and Microsoft responding by directing GitHub to ban all Meta employees from accessing their repositories. And then Microsoft just takes over the official React repository, pointing it to their own Super React fork.” (Meta が Microsoft (GitHub の所有者で、npm も所有) と法廷闘争を起こし、Microsoft が GitHub に指示して Meta の従業員全員のリポジトリへのアクセスを禁止すると想像してみてください。その後、Microsoft が公式の React リポジトリを乗っ取り、自社の Super React フォークを指すようにします。) と例えている。
- 筆者注: GitHub はアメリカが敵視している国からのアクセスを遮断しているため公平でも公正でもない。この辺りは欧米圏の人間が無意識のうちに当たり前と捉えていることで、今回の Matt Mullenweg の新自由主義的行動 (もっと直接的に帝国主義的と言っても良いが) に通じる点ではある。
- “We expect others will follow as well.” (他の人たちも追随すると予想されます。) は “We expect others will defect as well.” (他の人も同様に離反すると予想されます。) から修正されたもののようだ。
- 予想通りなので言及する気にもなれないが、乗っ取りを批判する低評価レビューが削除されているとの報告。
- この行為については Ruby on Rails の創設者 David Heinemeier Hansson が “Imagine Meta getting into a legal dispute with Microsoft (the owners of GitHub, who in turn own npm), and Microsoft responding by directing GitHub to ban all Meta employees from accessing their repositories. And then Microsoft just takes over the official React repository, pointing it to their own Super React fork.” (Meta が Microsoft (GitHub の所有者で、npm も所有) と法廷闘争を起こし、Microsoft が GitHub に指示して Meta の従業員全員のリポジトリへのアクセスを禁止すると想像してみてください。その後、Microsoft が公式の React リポジトリを乗っ取り、自社の Super React フォークを指すようにします。) と例えている。
- 2024-10-12 WordPress.org における Advanced Custom Fields の状態について WP Engine が声明を投稿。
- 2024-10-12 securecustomfields.com が advancedcustomfields.com にリダイレクトされることが発見される。上にあるように、Secure Custom Fields は Matt Mullenweg が Advanced Custom Fields を乗っ取って作った新しいプラグインの名前である。
- 2024-10-12 長年 WordPress Fields API の改善に貢献してきた Scott Kingsley Clark が貢献から離脱。
- 2024-10-14 r/Wordpress のルールが一新される。今回の事件では時が過ぎるに連れてモデレーターの采配に疑義を呈するユーザーが増加していたが、こちらのスレッドでそれが爆発し、モデレーターはそれに応えてモデレーションルールを大幅に緩和することで対応した。
- 不満は主に、Matt Mullenweg の利害関係者である u/otto4242 が第二位のモデレーターであること、今回の事件に関するスレッドへの対応に一貫性が欠けていることだった。
- u/otto4242 は Audrey の従業員であると発言している。おそらく Audrey.co を指す。この会社については内実が余りうかがい知れないが、Matt Mullenweg が Automattic であまり実行したくない作業 (WodPress.org の開発・運営など) を行うため数人の従業員が従事しているようだ。
- Otto (Samuel Wood) については、皮肉にも WP Engine によるインタビュー記事が 2012-06-15 に掲載されている。
- 2024-10-14 WordPress 公式 X アカウントは WordPress.org へのアクセスを回復するための条件が WP Engine による訴訟の取り下げであり、脆弱性は関係ないことを認める。つまり意図的に乗っ取ったと認めたということでもある。
- 2024-10-14 NitroPack プラグイン (WP Engine の所有物) が WordPress.org に ban される。
- WP Engine のプラグイン等は次になるがこれらすべてが攻撃対象になりうるのだろう。
- 2024-10-14 Matt Mullenweg が被告となっている訴訟には WP Engine が原告以外の訴訟があった。Matt Mullenweg の母親の介護のために Audrey.co に雇用された Asmahan Attayeb と Jennifer Westmoreland は搾取的な労働環境 (具体性のない非常にマイルドな表現) を訴えている。
- Audrey.co はここにも登場するが、様々な理由で表に出したくない私的な行動のために使用されていると考えるのが妥当だろう。
- WordCamp 運営のために雇用されていた Heather Burns はこのように表明している。具体性がないため分からない部分が多いが、Asmahan Attayeb と Jennifer Westmoreland への侮辱的な扱いを Matt Mullenweg は内部で吹聴して回っていたと読み取れる。近年でもトランスフォビア行為や女性を軽視した態度が見られ、訴訟の内容と整合する。
- 2024-10-14 Ruby on Rails の創設者 David Heinemeier Hansson の発言に対する Matt Mullenweg の回答。さらにそれに対する David Heinemeier Hansson の反応。言葉にならないが、彼にとっては経済的利益の大きさが価値であり、オープンソースの理念を尊重する意思などは持ち合わせていないことが分かる。
- 回答 https://ma.tt/2024/10/on-dhh/ は削除されたが、https://archive.md/4yLNR で確認できる。
- 2024-10-14 Matt Mullenweg と非営利団体に対する洞察。明らかになっていないことが多いため話題としてあまり取り上げられない傾向にあるが、これらに加えて Audrey.co の内実は少なくとも興味深いものになるだろう。
- 2024-10-15 TechCrunch が Automattic は 2024 年初頭から商標を用いた収益化手法を準備していたと報道。
- 2024-10-16 AIO migration が WP Engine をサポート外に。
- 2024-10-16 Automattic 従業員に対して新たな退職条件が提示されたとの噂が飛び交う。退職金は上乗せされたものの、有効時間は非常に短く、外部に情報提供した従業員に対する訴訟を示唆、WordPress.org のアカウントを削除、(さらにおそらく口約束、)などそれだけで法廷訴訟になりかねない複数の事柄が並ぶ。
- 2024-10-17 404 Media が Automattic の従業員が置かれる環境を報道。Matt Mullenweg は、従業員のメールアドレスに贈られる Blind (匿名ディスカッションプラットフォーム) のメールを盗聴している (アメリカでは合法らしい) ようだ。
- 2024-10-17 r/Wordpress のモデレーターが u/otto4242 を残して辞任。モデレーターに DM による攻撃が殺到していたと抗弁しているものの、Automattic の直接利害関係者である u/otto4242 のみとなり、辞任したモデレーターはアカウントを削除するなど憶測を呼ぶ状況となっている。また、ルールも以前の状態に戻された。
- 2024-10-17 Paid Memberships Pro が WordPress.org からプラグインを削除。
- 2024-10-18 Pods Framework (Advanced Custom Fields の人気のある代替品) の作成者であり、WordPress core fields API チームの元リーダーである Scott Kingsley Clark のWordPress.orgアカウントが ban される。これにより、WordPress.org で配布されるバージョンの Pods の更新は困難になる可能性がある。
- Scott Kingsley Clark は Godaddy が所有する managed WordPress サービスである Pagely のシニア ソフトウェア エンジニアであるようだが、本人の言によると GoDaddy には支援する気はないようだ。